神様、この恋をよろしくお願いします。
案の定、怒鳴られたお母さんからの電話を謝りながら切った。
だいぶご立腹で、早く戻って来いってスピーカーホンにしてもないのにスマホから声が漏れていた。

「相沢くん、あたし帰るねっ」

どこかの丘の上、降りればたぶん知ってる道に辿り着く。 
言っても毎日暮らしてるところなんだから迷子なんてならないし、スマホはあるんだから最悪お母さんに電話すればいい。 

きっと大丈夫、ちょっと暗いくらいどうってこと…

「こっちだから」

「えっ」

相沢くんがあたしの手を掴んだ、もう一度。

だけど今度は手を繋いで、優しく握った。

「戻るんだろ?」

お母さんの大きな声は相沢くんにも聞こえていて、塾まで戻って来るように言われてことを知っていたから。

「…うん」

ゆっくり歩き出す、暗闇の中でも全部わかってるみたいだった。

「…一緒に来てくれるの?」

「俺が無理矢理連れて来たんだし」

「…、ありがとう」

相沢くんの手はとても冷たくて、あたしの手とは正反対だった。

手を引かれて歩いた、キラキラの髪の後ろを。

近くで見れば見るほど輝いてる。

暗いはずなのに、そんな風に見えた。

これって何色って言うのかな?

黄金色だっけ?


ただの金髪では言い表せられない、瞳の色と一緒だ。

相沢くんの色だ。


「あ、もうここでいいよ!」

お母さんの車が見えた。相沢くんと手を繋いでるのが恥ずかしくなって、塾の前まで行くのをためらった。

「わかった、じゃあな」

「うん、またね!ありがとうっ」

また相沢くんが暗闇に消えていく。
 
だからつい引き留めたくなって。

「ねぇ相沢くん!明日は学校来る!?」

「…。」

足を止めた相沢くんが振り返った。

「毎日行ってるけど」

「じゃあ教室!明日は教室にも来てね!」

なんでこんなに必死だったのか自分でもよくわからない。

だけど離した右手がいやに熱を持っていて、指先から流れるドキドキが止まらなかったから。

繋いだ手のひらがあたしの初めてだった。

関わりたくないって思ってたのに、今は知りたくてしょうがなかった。


どうしてそんな風に思ったのかな?




あたし、相沢くんのことどう思ってるの?
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