夫の一番にはなれない
第3章 偽りの夫婦
「今、中島さんのお母さんがお迎えに来て、帰りましたよ。これから病院に行くそうです」
微熱で早退した生徒の報告をするために、わたしは職員室に足を運んだ。
本来、保健室を長く空けるべきではないけれど、こうした連絡は直接伝えた方がスムーズだ。
保健室と職員室は隣接していて、距離はほんの数十メートル。電話より足を運んだほうが早いのだ。
「ありがとう、奈那子先生」
担任の先生に報告を済ませたところで、別の先生がふと話しかけてきた。
この職員室では、わたしと來の関係が密かな関心の的になっている。
來が私生活についてほとんど語らない分、そのしわ寄せがこちらに来るのだろう。
「ねえ、この前ね、滝川先生と“川柳”の前でバッタリ会ったのよ。お弁当屋さんの前で」
「そうなんですか?」
知らなかった。というか、聞いていない。
でも思い出した。先日、來が買ってきてくれたお弁当。それが“川柳”のものだった。
「今日のお昼はお弁当なんですね、って聞いたら、“そうですね。今日はお互い楽しようと思って”って、そう言ってたわよ。仲いいのね~」
「あ……そうなんですね」