【奏】きみにとどけ

近づけない

それから、カズトが恩田に

どう説明したのかわかんねぇけど

4人で昼飯を食ったり

前より学校で4人で過ごす時間が増えた。




笑顔を見る機会も増え


俺はそれだけで穏かな気持ちになれた。




もっとその笑顔を見たいって思う。




授業中に切なそうに


窓の外を見る野々瀬が少なくなればいいと…。




いつかはなくなればいい。






放課後も4人でよく遊びに行った。



カズト達には邪魔だろうな



そう思ったけど

2人はそんな事なく

独自の世界を2人で作り過ごしているようだった。




周りにはわかんない2人の雰囲気。



イチャついてるとかじゃなくて…。


こういうの凄ぇいいなって思う。




遊ぶ事が増えると


次第に距離も縮まっていく。




『椎野くん

あの店、行きたいけどいい?』




カズト達に気を使って

2人でブラついてると

野々瀬が笑顔で指す方向に

パワーストーンの店があった。



「おう、いいぞ」


笑顔の野々瀬とは正反対に

俺はドキドキしているのを

隠す事で必死だった。




野々瀬の事は隠すつもりもねぇし

気持ちだって隠すつもりねぇけど

今ある関係を失わないようにと…。



店の中で、野々瀬は

透明の石がついたストラップを見つめてた。



何の変哲もない透明の石。



「水晶か何かか?」



あんまり石には詳しくねぇし

透明=水晶ってイメージだから聞いた。



『ううん

レインボークリスタルっていうんだって。

光で中に虹が出来るらしいよ。

覗いてみて?』



そう言ってストラップを翳しながら

近づいて来る野々瀬。





―――ちっ…近い。



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