だめんずばんざい





ベッドで大きくう~んと伸びをしてから、もう一度体を丸めて膝を抱える。何時かな…左手一本を布団から出し手探りでスマホをキャッチし、目を閉じたまま布団の中で手探りでボタンひとつに触れる。閉じた瞼に感じる明かりに薄く目を開けると‘9:08’という文字が視界に入るというよりは脳裏に焼き付けられてまた目を閉じた。

うとうと…うとうと…気持ちいいけどそろそろ起きようか。少しうとうとしただけなのに、ベッドから出ると

「もう10時前…」

うとうとが気持ち良すぎて一瞬で時間が過ぎていたようだ。4.6畳の長方形の洋室から出ると

「あっ…いた…忘れてた…」

布団から足をはみ出し半分横向きで寝ている無防備なガクトがいて存在を思い出した。その布団と壁の10センチほどの隙間で足を進め…あっ…寝起きでまだバランスが悪くてふらつき、彼の枕スレスレに片足を乗り上げてしまう。起きようが知らない…私は気にすることもなく、パタン…トイレに入った。

そのまま洗面所や台所を行き来するが、ガクトが起きる気配はない。私は彼の布団の隣にある座卓に珈琲とシュガートースト、それから12等分にカットしたリンゴを置いて

「いただきます」

小さく言って食べ始める。途中でテレビをつけて天気予報を見ていると

「いい匂い…だ…」

ガクトが閉じたままの瞳を左右同時にゴシゴシと手の甲で擦った。ここまでイケメンだと、それですらカッコいいのか…私は口のまわりについた砂糖を指で払い落としながら

「…ぉはよ…」

ただ名前とルーズだということしか知らない彼に声を掛けた。

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