だめんずばんざい




スマホが鳴ったが聡にいからでなくばあちゃんからだったことに落胆する。カオルちゃんが‘落ちちゃった’と母さんにも言ったから‘落ちちゃった’と思っているばあちゃんの話はどうでもよく聞こえる。どうせ着替えるなら浴衣に着替えれば良かったのに、なんて悠長なこと言ってる気分じゃないんだ。

「ばあちゃん、のんびり浴衣になんて着替えてられない。冷えてたんだよ」

さらに、せっかくバッグを選んでもらったのに置いて行ったのね…そんなものカオルちゃんももらったことを忘れていると思うよ。

「バッグは聡にいに預けてくれたらいいから」
‘またすぐ来るならその時にでも…’
「いつ行くかわからない」

じゃあ、とどうでもいい電話を切り上げてからしばらくすると再びばあちゃんだ。

「何?まだ何かあった?」
‘あのね…プールに私のメノウの帯留めが落ちていたんだけど…’
「怒るよ?俺」
‘まさかとは思うし、カオルちゃんだとも思っていないけれど…一応何か知らないかと…’
「それマジで聞いてるの?くだらない」

めちゃくちゃ悪意がある‘犯行’じゃないか…カオルちゃんを泥棒に仕立てあげるなんて無理なんだよ。聡にい…早くしてくれ。
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