だめんずばんざい






「荒木親子は‘無事’到着だそうですよ」

朝イチに業務確認をしたあと聡にい…ここでは宗方…が俺に言う。

「あれってじいちゃんが最初から決めてたの?」
「おそらく。ただ‘無理やり行かされた’とならないように荒木に選択させておられました」

状況と事実確認後じいちゃんは、カメラ映像を添えて警察へ‘殺人未遂’‘窃盗’で被害届を出すと言ったらしい。自分勝手に‘それだけはやめてくれ’と懇願する二人に、屋敷を離れての勤務をするか?と聞けば親子とも大喜びだった。‘五百旗頭も荒木もこの日一日のことをなかったことにして口外しない’という念書を作成して署名後‘勤務先’を告げたら顔色を変えて泣いたらしいが‘じゃあ、警察へ届け出る’と言えば抵抗はしなかった…

「警察の方が楽か?」
「そうですね。刑期は長くないでしょうから」
「でも‘五百旗頭’を最高の家と思い込み、仕える方を選んだ…」
「そんなところです。殺人未遂と窃盗は事実ですから、こちらは厳しく責めることが出来ました。まあ…当然だよな…カオルさんが泳げなかったら沈んでたぞ」

宗方の口調が聡にいのものに変わる。

「うん…雨で満水だったし、靴も服も身につけていたからね…バタバタしたら沈むことはわかってたみたいだよ、カオルちゃん…じっとしてたら上下がわかったって」
「いつも冷静だな」
「…取り乱したり、罵声を浴びせたり、怒り狂ったり…すればいいのにしないね…誉められたことではないよ」
「長い間の習慣、特に感情面はすぐには変わらない。変われないだろ。10年かかって習慣付いた気持ちは10年かけて変えていくぐらいでないと」

そうか…その通りだな。
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