華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
目を覚ましたのは、誰かがつばきを呼ぶ声が聞こえたからだ。
昨夜は京と同じ部屋に寝かされていたこともあり、寝付けないかと思いきや久しぶりの食事にふかふかの布団のお陰ですぐに眠ってしまった。
上半身を勢いよく起こすと、真横に正座をしながらおはようございますと挨拶するみこがいた。
みこは昨夜とは違う柄の着物を着ていた。
辺りを見渡す。既に京はここにはいないようだ。今何時かと問うと10時過ぎだと伝えられた。

「朝食の準備が出来ております。京様は既に仕事へ向かいましたのでおりません。京様から朝も昼もしっかり食べさせるように、と言いつけられておりますので」
「わ、わかりました。すみませんすぐに起きるはずが…」
「いえ、ぐっすり眠ってもらえた方が都合がいいです」
都合?と聞き返すと、すっと唇を引き上げたみこは続けた。
「私たちが眠っている間に逃げられると困りますで。京様からもしっかり見張るよう言われております」
「…」

女中頭であるみこにつばきの考えていることは筒抜けなのかもしれないと思い頬を引きつらせた。
ということは、京にも逃げようとしていることはバレているのかもしれない。
「さぁ、食事にしましょう。ご案内いたします」
みこにそう言われ、つばきは立ち上がった。

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