たとえこの世界から君が消えても
「なんで頭叩くの、奏多!」


「ははっ。悪い悪い。目の前にあったからつい、ね」


「もう奏多なんて嫌い」



頬を膨らませそっぽを向くと、奏多が慌てたように顔を覗き込んできた。



「ごめんって!陽菜からかうの楽しくてさ」



ポンポンと優しく頭を撫でられ、どきりとする。


…あれ?なんかこれ、前にもどこかで…?



頭の片隅に何かの映像がちらついたが、すぐに消えてしまった。



「まあ奏多がこんなことするの陽菜くらいだもんねー?」


「ばっか、おまえ!聞こえんだろ!」


「奏多の気持ちにいつまで経っても気づかない陽菜には、こんくらいがちょうどいいんだよー」


「陽菜、別にこれは深い意味とか…。…陽菜?」



ボーとしながら歩いていると、急に奏多に顔を覗き込まれ、ハッとする。



「え?あ、なに?」


「いや、なんでもないけど…。大丈夫か?」


「ごめんごめん、まだ眠くてボーとしてただけー」
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