たとえこの世界から君が消えても
いつからだろう。素直に自分の気持ちを伝えられなくなったのは。


本当は母親にあんな態度で接したいわけじゃないし、大嫌いだなんて思っていない。


ただ、素直になることが恥ずかしいだけで、今更変えられないだけだ。


いつかはちゃんと伝えられるようになるといいけど、今はまだ子供で到底できそうにない。



「おーい、蓮。おっはよー」



朝から抱きついてくる暑苦しい男は、俺の知る限り、真田愛翔(さなだまなと)しかいない。



愛翔は、整った顔立ちをしていてフレンドリーで、男女問わず人気がある。


幼い頃からずっと続けているというサッカーは、スポーツに疎い俺でもずば抜けて才能があるとわかるほどうまい。


そんな愛翔とは小学校から高校までずっとクラスまで一緒で、唯一気を許せる友人だ。



「聞いたぞ、蓮ー。おまえ、昨日A組の高嶺の花と呼ばれている加藤(かとう)さんから告られたんだってー?」



にやにやと笑う愛翔がむかついて、軽く腹にパンチを入れる。



「うっせ。誰から聞いたんだよ」


「痛い痛い。クラスの奴だよ。でも今回もまた断ったんだろ?」


「ああ、まあな」
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