たとえこの世界から君が消えても
陽菜先輩の頭を優しく包むように撫でながら、グッと我慢をする。



…俺のこの気持ちは、封印しなきゃいけない。


陽菜先輩との短い昼休みが大好きだ。


明るい笑顔が大好きだ。


…陽菜先輩が、大好きだ。



溢れてくる想いに、唇をきつく噛む。


一生俺の気持ちは誰にも知られることはないだろう。



陽菜先輩を好きでいるのは、今日で終わりにする。




まさか、こんなにも早く別れが来るなんて思いもしていなかった。



いつも通り、図書室の扉を開ける。


その日、いつもと違ったのは、顔面に吹きつけてくる風がなかったこと。


そして…いつまで経っても目の前の景色が変わらないこと。



「…どういうことだ?」



もう一度入るところからやり直してみるが、何度やっても結果は変わらない。


壁にかけられているはずの、西暦が二十二年前のカレンダーがない。


つまりここは、俺の時代の図書室ということだ。



「なんで?なんでだよ…っ」



もう何十回目かわからないほど図書室を行き来していると、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。


ふらりとその場にうずくまる。


いつものように「蓮くん!」と名前を呼び笑顔で駆けてくる陽菜先輩を期待するが、やってくることはなかった。



その日から、陽菜先輩のいる時代に行けることは二度となかった。
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