ぼくらは薔薇を愛でる
 支度を終えて約束の時間よりほんの少し早くロビーに下りれば、既にそこにはレグがいた。
 半ズボンにシャツという格好で、靴はピカピカ。瞳と同じ色のネクタイをして髪もいつもと違う。まるで王子様だ。階段を降り切るまで、レグから目が離せないくらいにカッコよかった。

「レグ、お待たせ」
 一応おめかししているからパタパタと駆け降りるわけにもいかず、手すりに手を置いたまま一段ずつ降りていく。クラレットの声を聞いたレグは振り向いて階段下までやってきて、そして動かなくなった。

 ――え、かわいすぎる……てんし……?! なに? ぼくのてんし……!

「あの、レグ、どこかおかしい? 大丈夫?」
 あと二段で廊下に降りる所まで来て、我慢できずにトトトッと飛び降りてレグの前に立った。固まり無反応の様子を心配して顔を覗き込み、少し俯いてしまう。

「おおおおかしくないよ、大丈夫!」
「そう? ならよかった」
 へにゃっと笑顔になったクラレットのかわいさに、レグは再び魂を奪われかけたが、気を取り直して、王子が姫にダンスを申し込むような仕草でクラレットに言った。

「バーガンディ侯爵令嬢、お迎えにあがりました」
「ふふ、レグったらまるで本物の王子様みたい」
「そうさ、今日は君の王子だよ」
 自分で言って恥ずかしくなるレグ。差し出した手にクラレットの手が重なる。そのまま肘にかけさせ馬車までエスコートした。
 先日感じたような刺激は起きず、双方心の中でホッと安心していた。パープルに見送られて馬車は走り出し、ほんのわずかな時間でジョンブリアン邸へ着いた。

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