俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
 ビルのエントランスに暁が入った瞬間、その場の空気が変わる。それは、いつもの事だ。大概の者はすっと端に避ける。

 お近づきになりたいと思っている女性の下心には、暁だけでなく駿も敏感に感じ取れる。

 暁が通ると緊張感が増すエントランスで、この日は予想だにできない出来事がふたりの数メートル前で起こった。

 『ビタッ』痛そうな音を響かせ、漫画かと突っ込みたくなるほど盛大に女性が転けたのだ。

 『シーン』と辺りは何とも言えない空気が流れ静まりかえる。

 暁の機嫌は一瞬にして急降下したのが、駿には手に取るように伝わった。

 『ピキッ』と音が聞こえそうなほど眉間にシワを寄せている……。

 女性はわざと暁の前で転けて気を引こうとしたのだろうか?判断できない。ただ、駿の目線の先には女性のつけていただろう眼鏡が飛んで落ちている。

< 5 / 253 >

この作品をシェア

pagetop