【完】ハッピーエンドに花束を

【5】ハッピーエンドに花束を(完)



 春のうららかな風が流れるなか───

 今日は3月1日。いよいよ卒業式当日を迎えた。

 校長先生からの有難いお言葉、卒業生の啜り泣く声、最後の校歌斉唱。入場から退場までの式典中、やっぱり考えていたことは暁人のこと。今日で関係を解消する、彼氏のことだ。

 家デート以降、私たちは何事もなく過ごしていた。

 あの日のことは互いに何も掘り返していない。なかったことにするつもりだろうかと思ったけれど、私も追求されない方が楽だった。

 あれからずっと、脳裏に浮かぶのは暁人の声。曖昧な記憶の中で、彼は私のことを好きだと言ってくれたのを覚えている。
 しかし場に流されて言っただけなのか、それとも・・・いや、考えるだけで苦しくなるだけだからやめておこう。

 ぐるぐると考えている間にも、カウントダウンの音が刻まれていく。
 結局教室に戻った後の最後のHRも、担任の先生からの言葉も、全部上の空でよく聞いていなかった。
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