先生、私がヤリました。
「ねぇ、リズちゃん。今日、お姉ちゃんのおうちで一緒にご飯食べない?」

「え?」

「男の子がいるの。今日五歳になったんだ。リズちゃんはもう八歳になった?」

「うん。五月。」

「そっか。じゃあリズちゃんの三つ下だね。はーくんっていうんだけど、体が弱くてお外に出れないから友達も居ないんだ。でもせっかくの誕生日だから特別なことしてあげたくて。」

ハヅキくん、とは言いませんでした。
連日ハヅキくんの名前がテレビで流れていたし、小二の子だからって油断出来ません。

顔は見せることになるんですけど。
それに関してはあまり心配してませんでした。

ハヅキくんは写真写りが悪いのか、テレビで公開される写真はどれも実物のハヅキくんらしくなかったから。

「でもお母さんに気付かれたら…。」

「大丈夫。夜のうちにちゃんと送ってあげるし、バレないようにするから。ね、お願い。リズちゃんも毎日一人でご飯は寂しいでしょ?はーくんもそうなの…。お姉ちゃん、はーくんが可哀想で…。」

俯いて、声を震わせてみました。
泣いてはいません。ちょっと声にビブラートかけてみただけです。
女優なら不自然すぎるって批判されたでしょうね。

でも純粋な少女は信じてくれました。

「お姉ちゃん!分かった。リズ、行くから泣かないで。」

「ありがとう。」

顔を上げて、私はリズちゃんににっこり微笑みました。
それから玄関に置いてきたキャリーケースを引っ張ってきて、リズちゃんの部屋に開けて広げました。

「この中に入れる?」

「この中に?」

「うん。サプライズだから。」

「サプライズ?」

「リズちゃんは、お友達の居ないはーくんにとってプレゼントみたいな物なの。はーくんを驚かせたいの。だから家に着くまでこの中でジッとしてて欲しいんだ。大丈夫だよ。はーくんも時々この中に入って遊んでるんだから。」

「でも…。」

「ねぇ、リズちゃん。ちょっとワクワクしない?お母さんに内緒で、他のお友達には出来ない遊びだよ?」
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