政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 娘の気持ちを最優先させる母親と継父は終始穏やかな物腰だった。そんな彼らから愛情をきちんと受け取って育ったからこそ、恵茉は温和な性格なのだろう。

 肝心の土地については、親族となる俺になら運用を任せたいと信頼を寄せてくれたので今後問題は起こらないはず。

 俺の方はといえば、これまで仕事を理由にして避けていた話題だったので、両親に結婚したい女性として恵茉を紹介したら大喜びされた。

『孫の顔を拝むのは無理だと諦めていたのに』と涙ぐんでいる母さんを見つめる恵茉も何故かもらい泣きをしていて。

 そのおかげではないとは思うが、恵茉をいたく気に入った両親からは早く一緒に住んで婚姻届けを提出しろとせっつかれ。

 翌日の仕事終わりにジュエリーショップを回って結婚指輪を購入し、その翌週に結納を済ませ、さらに一週間が過ぎた今日という日に、俺がひとり暮らしをしている都内のタワーマンションに恵茉が引っ越してきた。

 あの騒動から僅か一ヶ月。ものすごいスピード結婚だ。
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