政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「痛くないけど、身体がぞわぞわして変な感じなの」

 初めての体感はこれからどうなるのか想像ができなくて怖い。そこでふと、私の指先が涼成さんの背中にきつく食い込んでいることに気づいて血の気が引いた。

「ごめん」

 退けた手を涼成さんが掴む。

「怖いよな。しがみついてていいから」

「でも」

「いいから」

 諭すような口調だったので、甘えて再び背中に腕を回す。

「怖いならやめるから、無理はしないでくれ」

 咄嗟に顔を横に振った。

「やめないでほしい。涼成さんは気持ちよくないかもしれないけど、でも、本当の意味での夫婦になりたい。涼成さんが好きだから愛してもらいたい。お願い」

 我ながら大胆なお願いをしたと思う。そうさせたのは涼成さんへの恋情で、ただひとつの想いだけでここまで突っ走れる〝愛〟という感情はすごい。
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