近くて遠い幼なじみの恋
「男連中は知ってたんじゃないのー?」

華がほくほくトロトロの山芋の鉄板焼きをスプーンで掬い私のお皿にのせてくれる

「いや、誰も知らなかったよな?つか、幸が知らない事俺らが知ってるわけないだろ」

颯太の言葉に皆んなが頷いた

このメンバーに基本隠し事はない
あーちゃんの事は私が1番知ってると私も思ってた。

「どうかな?幼なじみだけど知らない事は知らないし」

「幼なじみって近いようで遠いよな。壊したくないから気持ち言えない部分ある」

「あぁ、それ分かる!俺も佳奈に告るのまじ考えたもんなー」

幼なじみって言葉に甘えてて私は何もして無かった。

ずっとあーちゃんに起こして貰って、あーちゃんと朝ご飯食べてそれが続くと思ってた。

「絢のじいちゃんの言う事なら聞くしかないよ」

「あのじいちゃん、本当怖いからな」

昔、響旅館の庭に植えてあるビワの木に登って皆んなで食べては追い掛けられて怒られてた

「幸のじいちゃんは知ってたんじゃないの?」

「うーん、わかんない。入院してるから聞いてない。ねえ!!今日はおめでたいんだから飲も!!」

3杯目のジョッキを高々と上げる

「うん!飲もう!明日の仕事なんてポイ」

「おいおい、皆んな明日を考えて飲めよー」

カウンター越しに大将に言われて颯太が首を竦める姿に皆んなで爆笑

「幸のところのイカ美味しーい!!」

「この鶏、颯太んちのー?」

床屋の大輝、肉屋の颯太、魚屋の私、花屋の花梨、八百屋の華、商店街会長の娘の佳奈
仲間達の暖かさにぽっかり空いた穴を少し埋めて貰えた気がした。
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