近くて遠い幼なじみの恋
「着いたよ」

最近あまり寝てなくて車の振動についつい我慢出来ずに寝てしまってた

「また、ヨダレ。ふはははっ」

「まじで?」

口元を吹きつつルームミラーで確認するとまたヨダレのあとにミラーの中の私は顔が真っ赤

「行くよ、降りて」

着いた場所は最近隣の県に出来たショッピングモール。小さいながらも遊園地もあり話題の場所で仲良しグループで今度行こうと言ってた

「あーちゃん、ここ来たかったの!」

興奮する私に珍しく満面の笑みを浮かべてる

「まずは見て回ろうか」

手を目の前で出されて躊躇した。

「見られたらどうするの?」

車の中とは違いさすがに外では誰がどこで見てるか分からない。

「気にしなくて良い。きちんと幸にも話すから」

ギュッと手を握られて振りほどこうとするけど力をもっと強められる

「じゃあ!今日は楽しも!!」

結局あーちゃんが好きなのは変わらない

どうなっても今日は楽しくいっぱい思い出を作って忘れられない日にしようと心に誓った





「3年イギリスに行く事にした」

外は夜景が綺麗なのに私達の乗った観覧車の中は静まり返った

この間の1週間は本格的に行く為の下準備だったと真っ直ぐ私を見た。
その顔が真面目で本当に行くのだとショックをうける

「あーちゃんの話したい事ってその事?」

自分でもびっくりするくらい低い声と冷静な頭の中

「あと、婚約者も一緒に」

ガンと後頭部を殴られた感じにあーちゃんを見る事が出来ずに観覧車の外を見た

「そっか」

「響を大きくするには政略結婚も仕方ないから」

あーちゃんにそんな事言われたら何も言えない。

地元の魚屋では政略結婚の相手にもなれないから。

「もう自分で朝起きれるし…だいじ」

大丈夫と言って安心させたいのに言葉にならない。

「ごめんな」

何に対して謝ってるのか分からない

幼なじみが近くて遠いのは分かってた
あーちゃんが遠くなってたのも分かってた

ただ分かるのは今日で幼なじみに区切りを付けて先に進むと言うあーちゃんの決意。

ずっと私達は手放せなかったんだ“唯一無二の幼なじみ”を。
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