こころが揺れるの、とめられない


「……みくる、大丈夫?」


女子更衣室の中。

サッカーグラウンドに向かう前に、ジャージに着替えながら、可奈ちゃんが心配そうにわたしを覗き込んできた。


「さっきから、すっかり考え込んじゃって。……もしかして、体育館での件?」


綾人から聞いたよ、と、可奈ちゃんが眉を寄せた。


「普通に仲良くしてた子たちだったけど、見損なったな。……みくるに当たったって、どうにもならないのにね」

「可奈ちゃん……」

「わたし、全然気づいてなくて。綾人が強く言ってくれたみたいだから、今回はわたしはなにも言わなかったけど……。次またなにかされたら、すぐに教えて。わたしがガツンと言ってやるから」


ム、と唇を結んで、体の前で拳をつくった可奈ちゃんは、可愛らしいのに、ずいぶんと頼もしく見えた。


「……ありがとう……」

「任せてよ」


お日様みたいな笑顔が、わたしの胸の底を、照らしてくれる。

ちょっとだけ、力が湧いた気がした。

< 136 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop