こころが揺れるの、とめられない
「——彼女にベタ惚れ、ってことは周知の事実のはずなのに、不思議だよなあ」
「……!」
突如背後から聞こえた声に、わたしの体が揺れた。
ガタンッ、とぶつかった机が音を立てる。
「は、春野センセ……」
……びっくりした……。
いつの間に入ってきたんだろう。
振り向きざまに、いたずらっ子のような笑顔を浮かべているエプロン姿を見上げると、
「ほぼほぼ公開告白をしているような男に、気持ちを伝えようと思えるなんて、女の子は強いね」
感心したような声が降ってきた。
「……公開告白、って……」
「だってそうでしょ? あの絵、誰が見ても、俺はこの子のことが好きです〜って言ってるようなもんだよ」
廊下の方向を指しながら、ニヤニヤを隠す気のない先生。
わたしは恥ずかしいやら照れ臭いやらで、言葉が出ない代わりに、じっとりと抗議の目を向けた。