こころが揺れるの、とめられない


——三澄くんを好きになって、よかった。

勇気を出して気持ちを伝えて、よかった。


そう思えることが、嬉しい。



「ね、……俺の名前も、呼んでみて」

「え……あ、新、くん……?」

「……」

「……」

「……ぎこちな」

「……だ、だって! なんか、いきなりは照れるんだもん」



もう恋なんてこりごりだ、なんて、心から思ったこともあったけれど。

……あの日、この場所で感じた後悔を、乗り越えて。

代わりに、大事にしたいと思える気持ちが、今も、……幸せな色を浮かべて、この胸の中に存在している。


……こんなのって、奇跡みたいだ。

もう、絶対に、手放したくない——。



「じゃ、練習しよーか。はい、もう1回」

「……無理っ。また、明日に1回ということで……」

「やだ」

「やだも無理っ」

「……ふーん? そんなこと言うんだ」

「……」

「ま、いいけどね。上手に名前呼べるまで、……この手、離さないだけだし」

「〜〜っ」



三澄くんと過ごすたび、……どんどん膨らんでいく想い。

それが、まるで存在を主張するかのように。



「っ、――新くん」



今日もわたしのこころを、——きらきらと、揺らしている。





END

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