こころが揺れるの、とめられない
不思議そうに見つめられ、わたしは答えを迷った。
これから美術準備室へ向かおうとしてたところ、だなんて。
三澄くんとのことを綾人に話すのは、どうしてだかはばかられた。
上手に説明できる自信はないし、関わるようになったきっかけに綾人が関係してることは、口が裂けても言えない。
わたしの言葉が続かないとわかると、
「今日、部活休みだろ。今からカラオケどうかって、可奈と話してたんだけど」
綾人が楽しそうに笑った。
浮かんだえくぼに、胸のあたりがキュ、と切なくなって。
さりげなく、視線を逸らす。
「……肝心の、可奈ちゃんは?」
おかしなことに、可奈ちゃんの姿は見当たらなかった。
どこにいっちゃったんだろう。
キョロキョロとしていると、掴んだままのわたしの腕を、綾人が引っ張った。
「あいつ、日直でさ。教室で日誌書いてるから、一緒に待とうぜ」
されるがまま一歩踏み出したところで、わたしは慌ててその場に踏みとどまる。