こころが揺れるの、とめられない
「よかった。きてくれて」
「へっ?」
ぼうっとしていたところに声をかけられて、心臓が飛び跳ねる。
見つめていたのがバレないように、わたしは瞬きと同時に目を背け、前髪を整えるフリをした。
「先週、余計なことしたかなって」
「……あ……」
わたしができるだけ思い出さないようにしていたことを、三澄くんはあっさりと話題にした。
じわじわと火照り出す頬を隠すように、顔を傾けて、苦笑する。
「ううん。おかげさまで、気持ちが少し楽になったよ」
「そ。ならいいけど」
ホッとしたような目をわたしに向ける、三澄くん。
その表情に、胸の内でなにかが点火したような温もりが膨らんだ。
……おかしいな。
練習に付き合ってほしいと頼まれたときの印象とは、正反対だよ。
三澄くんは、……やっぱり優しいひと、なんだね。