こころが揺れるの、とめられない
「上村さんって、美術部じゃないよね?」
すっかり慣れてしまった、美術準備室までの道のり。
頭で考えるより前に、体が勝手に、北側の階段に向かっている。
1階へと、下りていると。
「最近、美術準備室に通ってるのを見るけど……なにしてるの?」
ちょうど、階段を上がってきた名前もクラスもわからない女の子に、すれ違いざまに声をかけられた。
振り返り、見上げる形で立ち止まる。
上履きの色から、同学年だということだけが、確認できた。
「……えっと……?」
突然のことに戸惑って、曖昧な笑みを返す。
はっきりと答えないわたしに、
「……もしかして、誰かに会うため?」
さらに、質問が重ねられた。
目の前の女の子から向けられる、探るような目つき。
……細められたその瞳は、ほのかに赤らみ、潤んでいた。
まるで、ついさっきまで泣いていた、みたいな……。