いちごみたいに甘酸っぱい君のアイ 〜序章〜
ごめん
<紗綾side>
「ただいま〜。」
ただ私の声が響く家。誰ひとりいない、生活の最低限のものしか揃えられていない。
部屋に入り、壁に飾られている写真に目をやる。
クリスマスに、陽雅と撮った写真。写真の中では幸せそうに笑っている。
「…ただいま、陽雅。やっぱ私、ダメなままだよ。」
返事なんてされないのに一人で話し続ける。
「今日、皆に会ってきたんだ。皆すごい社会人になってて、変わってたのに、私は何も変わらないよ。ねえ陽雅、私、どうやったら変われるかな?」
キラキラきらめいている皆と、正反対の位置にいる私。一歩も前に進めてない。
「陽雅…もう無理だよ、私。お願い、助けてよ……。」
ネックレスを握って、写真におでこをくっつける。
宝石が埋め込まれた思い出のネックレスは、流れる彼女の涙のように光っていた。