真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 断らないでほしいなぁ、と願って俺も和泉さんを見る。


 正は見ないでと言われてしまっているから見ないまま、ゆっくりと目を閉じた。


「なっ、そ、そんな、私に責任が来るんだったら…………断れないってわかるでしょ」


 和泉さんが了承した瞬間、ぱあぁっと羽入さんが満面の笑みで和泉さんに抱き付いた。


 う、羨ましい……。


「ん~っ、木葉ちゃん、頑張ったねぇ~、よしよし~」


 頭まで撫でている。


 ……俺以外にはしないって約束したのに。


 こんな些細なことで女友達にまで嫉妬してしまうなんて、いくらなんでも器が小さすぎるだろうか。


「ふふっ、一悟くんも、嬉しいね~っ!」


 だけどそんな心のもやは、羽入さんの笑顔が俺にも向けられたことで吹っ飛んだ。


 お昼を一緒に食べられるということに、そこまで喜ぶなんて。


 あ~俺も、羽入さんに抱き付きたい。


 二人きりのときに取っておきたいので、そんな衝動は心の内にしまっておく。


 そして、目を開いて薄く微笑んでいる正に「ありがと」と声をかけた。


 ほんと良い友達を持ったなぁ、俺。


「別に、一悟のためだけじゃない」

「え、じゃあ……?」

「猫に早く懐かれたいんだ」

「ね、猫?」


 えっと、それって、和泉さんが猫っぽいってこと?


 それとも本当の猫の話をしてる?


 友達の複雑な一面に俺は困惑するしかなくて、


「が、頑張って……?」


 と中身のない応援をすることしかできなかった。


 でもこれ、応援してもいいやつなの?


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