貴方になりたい
「傘かすよ!」
「あ、大丈夫です……」


正直彼に近付きたいと思ったが、今の自分を見られたくないという気持ちが大きい。


すっかり落ちてしまったメイク。
ボロボロなヘアースタイル。


「いやさ、俺、車の中に傘ふたつあるから貰ってくれない?」
「あ、はい……」


ここまで言われたら、断る事なんて無理だ。

何より、彼の容姿が好み過ぎてボロボロ状態の私でも知り合いくらいにはなれるんじゃ無いかなと思ったのが本音。

その為に私は行動開始した。


「あ、あの……」
「はい?」
「傘貸してもらうだけじゃ悪いので……、連絡先交換しませんか?
今度お礼したくて……」
「なんだ!そんな事気にしなくても良いのに!!でも、なんか嬉しいな!!」


嬉しい?

それは、私と繋がれる事がって事?

嫌でも期待してしていると、彼は爽やかに口を開いた。


「じゃあ、連絡先交換しようか!」


コンビニの隅っこで連絡先を交換して、彼の車に向かう。


「ちょっと、助手席座って!!
中にタオル有るから、濡れた所を拭いてから行くと良いよ!」
「あ、ありがとうございます」


見るからに高級そうな車に乗り込むと、彼の匂いが鼻腔を包み込み、頭がクラクラする。


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