貴方になりたい
前は偶然に会えた。

しかし、今回まで偶然は起こるはずなくインターフォンを押した。


何故か、玄関から顔を出したのは聖光の友達。
余程仲が良く遊びにでも来ているのだろうか。


「あの……。聖光います?」
「今は居ないよ」


聖光が居ない。それを機会に、ずっと気にしていた事を口に出した。


「聖光って、結婚してますよね?」


ガタイの良い男は口角をぐにゃりと持ち上げる。


「なんだ、知っていたんだ。その事で話が有るから中入らない?」


話してなんだろう。もしかして、聖光が奥さんと別れたがっているとかだったりして。

病院で見た感じそんな素振りは全くなかったけど期待してしまうわたし。


「は、話しましょう」


部屋の中に入ると、相変わらずオシャレな空間。ただ、聖光が居ないってだけで違う空間に感じてしまう。


そんな事を考えながら、部屋の雰囲気をオシャレに見せてくれるソファーに腰掛けた。

何故かお酒を差し出した男。


「飲んでいいよ」
「今、妊娠していて……。
気持ちだけ受け取ります」


そう言うと、男は目を丸くしてこちらを凝視した。


「子供って、誰の子供?」
「聖光の子供です」
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