観念して、俺のものになって
カフェモカ


***


「……ふわぁ」

タイピング音と営業をかける電話の声が響く、朝のオフィスにて。


どこにでもある灰色の事務用片袖机に頬杖をつき、欠伸を溢しながらPCで作成中の注文請書をぼんやりと見つめる。


結局、昨夜はほとんど眠れなかった。


紬さんが言っていた、嫌がらせってどんなことをされるんだろう。

気になって眠る前に、うっかりネットで調べてしまったのが全ての間違いだった。


つきまといから始まって盗撮や盗聴、匿名での手紙や荷物の送りつけ、ありもしないでっち上げの中傷、果ては殺害……

そんなストーカー被害の実例を目にして、ますます不安が募るばかり。


紬さんと一緒に歩いていた時に見た、あの女性のじっとりとした視線を思い出しぶるっと震えて、その記憶を追い出そうと頭を振った。

……いけない、今は仕事に集中しなくちゃ。


私は作成していた注文請書に会社印をつくため、作成中のデータを印刷するボタンをクリックし机から立ち上がる。


FAXも付いている複合機のそばへ行くと、そこには市東さんが立っていた。

市東さんは私が印刷した請書をぺらっとめくって、そこに視線を落とす。内容に目を通した彼は眉を寄せたまま私にそれを渡してきた。


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