観念して、俺のものになって
マキアート



「はあ……つかれた……」


駅から徒歩10分、家賃7万5千円のアパートに帰ってきた私は、肩からかけたバッグと共にベッドにぼふんと沈み込む。

そのままうつ伏せになり、昨日干したばかりでふかふかの枕を抱いた。

さっきまでの緊張が解けたからなのか、何だか眠たくなってきたな……


重くなってきた瞼を擦りながら、窓の外へと視線を向ける。


時刻は午後5時だから、太陽はすでに西の空へと移動していた。


街を彩る夕暮れは、温かみのある茜色でとても綺麗。



しばらく空を眺めてから、ごろりと寝返りを打ち、仰向けになった。


そして、隣にある自分の鞄に手を突っ込み、買ったばかりの文庫本を取り出す。


ぱらりと開いた適当なページからベッドの上へと落ちてきたのは、別れ際に紬さんが渡してきた、彼の名刺だった。

私は文庫本をそっと閉じてベッドサイドチェストの上へ置き、その名刺に書かれたあの人の名前を見つめる。

「なんか、今日は現実感のない一日だったなぁ……」


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