円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 ちなみに、気になっていたグリフォン安否だけれど、母親が救出に来て子供のグリフォンを大きな鍵爪で掴むと、こちらを攻撃することなく飛び去って行ったらしい。
 騎士団も生徒も重傷者はなく、コンドルことフレッド・ハウザーが爪で掴まれたときにできた傷と、グリフォンの風圧で吹き飛ばされてできた打撲傷が数名で済んだようだ。

 グリフォンに生徒ひとりが襲われた上に、わたしが崖から沢に落ちて行方不明になってしまったことでキャンプどころではなくなってしまい、生徒たちはその日の日没までに急いで下山して解散となったらしい。

 王太子殿下がお忍びで参加しているという情報は騎士団の方にも入っていたらしく、例年よりも指揮にあたる騎士を増員していたことが幸いして、被害を最小限に食い止められたようだ。

 しかし、王太子殿下の婚約者も参加しているという情報は入っていなかった。
 おまけにその婚約者が王太子を庇って沢に落ち、流されてしまったと聞かされた騎士たちが受けた衝撃と、その後の大騒ぎがどのようなものであったか想像するだけで恐ろしい。

 だからといって、あそこでレイナード様を助けていなかったら、もっととんでもないことになっていたわけで、その点ではわたしのしたことは間違っていなかったと思う。
 ただ、反省すべき点もたくさんある。

 もしかしてわたし、トラブルメーカーなのかしら。
 わたしのせいで、お父様やお兄様たちのお仕事に差し障りがあったらどうしよう。
 どうしていつもこんなことになってしまうんだろう。
 穏便で円満な婚約破棄を目指していたはずなのに、大騒ぎになってしまった…。
 
 わたしの膝枕で眠っているレイナード様の頬に雫がぽたりと落ちて、自分が泣いていることに気づいた。
 慌てて指で拭おうとその頬に触れた時、レイナード様が目をパチリと開けてわたしを見上げ、驚いたようにガバっと体を起こした。

「シア!なんで泣いてるんだ?」
 レイナード様がオロオロしながら大きな両手でわたしの顔を包んで覗き込んでくる。

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