円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 名前は変えていたけれど、変装はメガネをかけただけという雑なものだったため、わたしに「ちょっと、そこのあなた!」と声をかけられてしっかり目が合ったときに、バレた!と思ったらしい。
 それなのに、四つん這いになれと強要され、踏み台にされて呆気にとられたという。

「ごめんなさい、わたしあの時、コンドルを助けようと必死で」

「いやあ、その前からステーシアちゃん、レイナードのことばっかり気にしてたよね。なんにせよ、無事でよかったよ。仲直りもできたみたいだし、俺たちもホッとした」

 ね?と目くばせし合って微笑み合っているカインとリリーはとてもお似合いで、あなたたちだって十分甘いわよ!って言ってやりたくなる。

「わたし、ステーシアが国外追放されたらついて行こうと思って、この休暇中はロマンス小説を書いていたのよ。その収入で食べて行こうかと思ってね」

 まあ、さすがリリーだわ!

「ちなみに、その物語はどんな内容なの?」

 リリーがチラっとレイナード様を見て、にんまり笑う。
「留学生にうつつを抜かした馬鹿な王子に婚約破棄された伯爵令嬢がヒロインなの。彼女は悪役令嬢の濡れ衣を着せられて国外追放されてしまうんだけど、そこで王子よりももっとハイスペックな男性と出会って、うんと甘やかしてもらって幸せになるっていうお話よ」

 わたしの肩を抱いてその話を聞いていたレイナード様の手に力がこもったのがわかった。
「待て、その王子はどうなるんだ?」

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