婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

 シャルコの採掘現場の視察を終えた第一研究部の魔導士たちは、慌ただしく王都へと戻っていった。ここの魔宝石の品質の劣化や選鉱の技術不足を疑われたようだが、その疑いは晴れた。つまり表向きは、魔導具爆発事故は魔宝石のせいではなかった、ということになっている。つまり原因不明、詳細は調査中。それが、第一研究部がこの現場に来て出した答えだった。
 しかし、一部の人間は知っている。爆発事故の原因は魔導具に使用されていた魔宝石がクズ石であったことを。シオドリックはそれを上に報告するつもりでいた。もちろん、こっそりとミシェルにも報告するつもり。このような面白いことを放っておくようなミシェルではないから。それに、あの兄の調査能力は恐ろしい。普段はぼんやりとして、影が薄いにも関わらず。

「やっと第一研究部の人たちが戻りましたね」
 エリックはうぅんと両手をあげて伸びをしている。やはり部外者がいるということは、普段と違うということもあって緊張するのだろう。
「でも、この現場に原因が無いことがわかって、よかったです」

「そうですね」
 リューディアもニッコリと微笑んだ。第一研究部たちは朝一でこの現場を訪れ、王都に戻るという報告をしてここを発った。だから、エリックの気持ちもわからないではないのだが。

< 147 / 228 >

この作品をシェア

pagetop