婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「え、あ。はい」

「なんだ。エリック。お前が弁当だなんて珍しいな。ほら、ここ、空いているからここに座れ」
 ヘイデンが隣の席をぽんぽんと叩いた。実はリューディアの隣の席も空いていたのだが、上司である彼からそう誘われては断ることのできないエリック。少し戸惑った表情を浮かべつつもヘイデンの隣へと座って、弁当を広げた。
「何かあったのか?」
 突然、昼食を食堂組から弁当組へと変えたエリックを気遣うヘイデンなのだが。
「あ、えと。ま、はい。あの、あれですよ。あれ。節約っていうやつです」

「そうか。そしてそれは、自分で作ったのか?」

「そうです」

「あら、エリック素敵じゃない。料理ができる男はもてるわよ」
 ちらりとヘイデンに視線を向けてから、イルメリはエリックを褒めた。褒められたエリックも悪い気はしないらしい。そうですかね、とか言いながら照れている。気まずそうな表情を浮かべているのはヘイデンとエメレンスである。
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