婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアはいつものようにローブのフードを深くかぶり、眼鏡の位置を調整して坑道へと向かう。坑道に響くのは採掘師たちの勇ましい声と、カンカンという掘る音。リューディアはこの音が好きだった。まるで、宝物を掘り当てるかのように彼らが丁寧に採掘をしている音だからだ。そして掘られた魔宝石の原石は採掘師たちの手に寄って外に運ばれ、事務所にいる選鉱の魔導士たちによって振り分けられる。

 今、リューディアが考えていることがもう一つあり、それがクズ石の扱い方あった。クズ石とは形が歪んでいたり欠けていたり、魔力を充分に取り込むことができなかったりしている魔宝石のこと。このクズ石も立派な資源ではあるのだが、今は残念ながら使い道が無い。だから、クズ石捨て場という大きく掘った穴に捨てられている。
 なんとかしてクズ石が利用できないか、とそんなことをぼんやりと考えていたからだろう。いつもなら足場の悪い場所に気を配って歩き、落下物がありそうな箇所も避けて歩いていたはずなのに。採掘師たちの声と音が聞こえなくなった静かなところでもあった。

「あっ」

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