【仮】イクツニナッテモ
・プロローグ
溜め息が出た。何度も。それが羨ましくもあったから。
自分よりも『人として出来てる人』。
接する度、そう感じるようになっていた。
持って生まれた性格もきっとあるのだろうが…多分、経験?。仕事上での、決して良いことばかりではない、繰り返される様々な事案、辛いこと、キツイこと。その経験から作り上げられてきたものなんだろう。感心してしまった。思わず、若いのにね、って呟いてしまった。知らず知らずに嬉しかったからに違いない。そうだ、私は嬉しかったんだ。
それが例えば本心からでないとしても、それを言葉として表現出来る、実行出来ているということでは尊敬に値する。
私なら励ます言葉をかけたとしても、きっと口先だけだろうとばれてしまうだろう。本心から言っていたとしてもだ。
他人のミスにイライラしない。イライラしたとしても態度に現さない。寧ろ穏やかなくらい。波が立たない。
気分にムラはないのだろうか。
変わらず声を荒らげることもなく、一定のトーンで語りかけるような口調。とても柔らかい声だ。
尊敬とは名ばかりの、これって実は……溺愛しているのではないかとさえ思っている。
そんな人の声に私は今夜も癒されているし、癒しを求めているような気がした。
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