禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
俺は深瀬の我儘な要求に「調べて参ります」と低く静かな声で応えると、すぐに九州へ向かった。

潜入捜査官としての任務が決定した時、はじめに行ったのは偽りの身分を作り上げること。
それから盈水會で幹部にのし上がるにあたって、有能な駒であると示す必要があるので、フロント企業として利用価値の高そうな会社を作ることだった。

そこで公安の協力者だった九條家の名が上がる。
改竄の痕跡を残さないよう戸籍が変更され、俺はその家で生まれた〝九條棗〟として生きる道が決まった。

海外留学から帰国した御曹司として九條国際貿易に入社した後、二年間の経験を積んで代表取締役社長に就任した。
それまで会社が開拓していなかった北欧貿易の路線を広げて会社を大きくしたのも、難なく代表の座に収まるため。これには自分の幼少時代に、外交官だった父に連れられ各国を巡った経験が役に立った。

そうやって堅実な実績を作った上で、俺のフロント企業に仕立て上げる。
潜入捜査が難しいとされていた盈水會で、幹部にまでのし上がり、五年間も生きていられるのは、この一点の曇りもない経歴のおかげだろう。

現地に到着し、倉庫群周辺を偵察してわかったのは、この地区は警備会社としてセイカ警備が多く選ばれていること。
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