夜を越える熱
「吉田」

雑踏に紛れて歩きながら電話をかけようとしていた腕を横から掴まれた。

「あ?」

ぎろりと睨むと、見知った顔だった。


「……俺。今どこ?……りょーかい」 

腕を掴んだ宮地を無視して繋がった電話に向かって話しだすと、宮地は腕を離した。




通話が切れるのを待つと、さっき会ったばかりの顔が口を開く。


「飲みに行くのか?」

「そう。いつもの愉快な仲間とね」



機嫌良さそうに答える吉田に対して、宮地の表情は固い。

「あれれ?お前、あの子は?」

からかうように言う。

「帰ったよ……今日はね」

「ふうーん。硬派だね」

興味無さそうに乾いた笑いを見せ、吉田は電話をポケットに突っ込んだ。


「…今日はお前のおかげだよ。一対一じゃ会ってもらえないところだった。おかげで親しくなれた」

「で、そんな恐い顔して礼を言いに来た?」

「違うよ。……今日、今井呼んだのお前だろ。あの子…河野さんが言ってもないこと嘘ついて、あいつを煽《あお》っただろ」




< 54 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop