カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─

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「ア……ナ、ログ……さん??」

「……え?」

 つい声に出してしまった。

 『アナログ』なんて苗字、見たことも聞いたこともなかったからだ。

「あ……それは初めて呼ばれた「読み間違い」ですね。「聞き間違い」でしたら、『ナグモ』などは良くありますが」

 その名を(つづ)っていた綺麗な指先がふと止まる。

 斜め上から苦笑いを含んだ柔らかな声が降り注ぐ。

 ワタシはハッと我に返り、その声の主へと顔を上げた。

「ご、ごめんなさいっ。知ってる人に似てたから、ちょっと名前が気になって……」

 慌てふためき謝ったワタシの頬は、一瞬にして熱を感じていた。

 そう、まさしく「顔から火が出る」みたいに。

 それは読み方を間違えたからではなく、彼の書類を(のぞ)き見たことに気付かれてしまったからだ。

 見上げた先にある見覚えのある顔が、「いえいえ、お気になさらず」と言うふうに首を(かし)げて微笑む。

 細い銀ブチ眼鏡の向こう、優しそうな瞳がほんのりと弧を描いていく。


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