カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
 アナログさんの頭上、天井の一点を見詰める。

 来月から本格的に始まる受験生としての一年後、自分はどの分野を目指して一歩を踏み出しているのだろう?

 それがまだ定まらない宙ぶらりんな今の自分を、アナログさんに悟られてはいないだろうか?

 ワタシは言葉の終わり、動揺を隠すように視線を外してしまったことを少しばかり後悔した。

「ミノリさんは『デジタル』と『アナログ』の意味、厳密にご存知です?」

 が、アナログさんは気付いたのか気付かなかったのか、それには触れずに話題を戻した。

 再び好奇心を宿した眼差しを、アナログさんの(もと)に注ぐ。

「うーん? ……ううん」

 『デジタル』と『アナログ』──日常気にせず使っているけど、何がどう違うのか、ワタシは知らない。

「簡単に言えば、デジタルは『数』を計り、アナログは『量』を示しています。例えば右へ斜めに上がってゆくラインがあったとしますね。それを階段状にして、一段一段突出した角の「或る一点」を計っているのがデジタル、反面アナログは斜めラインはそのまま、「任意の位置」を量ります。つまりデジタルは必ず『整数』で、アナログは『実数』。たとえ整数で示せない場所であっても、デジタルはそこから一番近い整数で一括(ひとくく)りにして表すので、いわゆる「とびとびの値」になるという訳です」

 アナログさんは手帳のページをめくり、階段を横から見たような(デコ)(ボコ)の連続と、その隣に斜めに登っていく一本の線を描いた。

 階段の下から二段目の出っ張りに点を打ち、斜めラインにも同じくらいの高さの位置に一つ点を打つ。


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