カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─

[10]

「アナグラム……(おぼ)えていますね?」

 再び唇を放したハクアくんは、ワタシの恍惚(こうこつ)とする瞳へ問いかけた。

 もちろん忘れるなんてない──出逢った日に教えてもらった言葉だ。

「貴女は僕の中から『アナログ』という言葉を見つけましたが、本質は……違うのですよ」

「本、質……?」

 そこでおもむろにワタシの背を起こし、ハクアくんはワタシをギュッと抱き締めた。

 お互いの頬が触れ、ワタシの視界は(とう)の背もたれになる。

「選び出した文字は合っています。でも『アナログ』じゃない……アナログのように一つの意味ではありませんが……」

「『穴』……と『黒』……?」

「ええ。その通りです」

 そこまでヒントを出されれば、答えは簡単だった。

 でも……本質が「穴」と「黒」ってどういうことだろう?

 穴、黒……黒い穴……黒い、ブラック……


< 27 / 33 >

この作品をシェア

pagetop