カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
「ゴメンね、ミノリさん……僕は、こんな刹那の快哉(かいさい)のために、貴女を利用した……でも、やめられないんだ……自分の中の真っ暗な空間が、ミノリさんのような純白な光を獲り込んだ時、僕は少しの間でも明るく温かなエネルギーに包まれる……もちろん黒は何色にも染まらないから、瞬間変わっても寂しい(にび)色程度だけどね……」

 ──「黒と白を合わせても、灰色にしかならないのにね……」

 憶えている──出逢いの会話の最中(さなか)、ほんの一瞬見せた寂しげな表情を。

 暗黒の宇宙にブラックホールが見えるのは、ガスが摩擦で超高温に達して、光を発して吸い込まれるからだという。

 ハクアくんの中こそが、ずっとからっぽだったんだ……優しいと思っていた筈の笑顔は、あっと言う間に哀しみを帯びて見えた。

 でも、だったら、ワタシは……? ワタシという存在は──!

「ち、がう……よ……」

「え……?」

 再び近付いてきた唇に、そっと指先を触れて。

 ワタシは同じく吐息混じりの声を発した。


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