カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─

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「では僕から。名前はハクア、です。ナグロ ハクア、ちなみに二十六歳」

「ハ、クア??」

 止まってしまった時を動かしたのは、彼の()き通る声だった。

 が、苗字だけでなく名前の珍しさに、ワタシは今一度時を止める。

 彼は困ったように微笑みを揺らして、隣の椅子に置いていたファイル・ケースから、手帳とペンを取り出した。

「こう書きます……『名黒』、『白亜』」

 広げた白紙のページに、スラスラと黒く達筆な四文字が綴られてゆく。

 「そう言えば左利きなんだー」とワタシはぼんやり思った。

 カタカナから漢字に変換された文字は、目から脳へ到達する間に、得体の知れないモノから、とても馴染みのある活字の集まりに変わった。

「アナタのご両親って恐竜博士とか?」

「いいえ。白亜紀をご想像なのでしょうが、身近な物でしたら……例えば『チョーク』のことですよ」

「チョーク!?」

 驚きが辺りに反響し、通りすがりのご婦人が怪訝(けげん)そうに振り返った。

 ワタシは慌てて両手で紙パックを持ち上げ、ストローを口に突っ込んだ。


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