観測の牢獄
(21)
「じゃあ、とりあえずメモしておこうか」
そう言って近宮先輩はコートのポケットから取り出した手帳に何かを書き綴る。
「消去のリストだ」
口調は、あくまで平然としている。
「あのお父さんが残っていては、『完璧な自殺』はできないからな。
お父さんの記憶に君が残っている限り、君の存在はこの世界から消えない。
こんなにも絶望している君なのに、お父さんの記憶の中の君は笑っているかもしれない。
それでは、まったく癪な話だろう?」
◇◇◇
この時から、私は何となく近宮先輩が私を連れ回す意図を解しはじめていた。
そう言って近宮先輩はコートのポケットから取り出した手帳に何かを書き綴る。
「消去のリストだ」
口調は、あくまで平然としている。
「あのお父さんが残っていては、『完璧な自殺』はできないからな。
お父さんの記憶に君が残っている限り、君の存在はこの世界から消えない。
こんなにも絶望している君なのに、お父さんの記憶の中の君は笑っているかもしれない。
それでは、まったく癪な話だろう?」
◇◇◇
この時から、私は何となく近宮先輩が私を連れ回す意図を解しはじめていた。