観測の牢獄

(35)

「本当に、シャトー・ディケムの1995年なんですか?」

「まあ、飲んでみれば君なら分かるだろう」

 ワインが注がれたグラスを、各々手に取る。

「じゃあ、乾杯だな」

「はあ、何にでしょう」

「それは、決まっているだろう」


――絶望的に、生きるしかないってことにさ。
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