男達が彼女を離さない理由
 美術館と競馬に行った以外、彼女と過ごすのは専らいつものカフェ。美術館は彼女から誘ってくれた。競馬は俺が誘った。次は彼女の番だ。いいやそんなの決まっていない。うーむ、もう少し進展しないもんかな。
 そうそう頻繁にカフェで出くわすわけではない。
 珍しく俺がかなり遅い時間にカフェに行った日、店の前を通りかかると、店の中央辺りに座る彼女と男が見えた。見たことある。定期的に会っているのかな。少し妬けた。眺めているわけにも行かず、そのまま店の前を通り過ぎ、家に帰った。彼女は俺に気付いたかな。
 次に会った時、男と居ましたねと言って良いものかどうか。俺が彼女に対して、いつも違う男と会ってますよねと言うのはおかしな話だ。彼女の勝手だし、俺と会うのが面倒に思われるようなきっかけを作ることになったら大失態だ。
 恋愛関係ではないが、俺にはそれなりに人肌を感じられる相手が居る。その1人に彼女もなってくれないかな、と虫の良い考えが浮かんでは消え浮かんでは消え。
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