ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 うっとりとその言葉を聞いているうちに、了承してしまったのだから、彼は本当に誘惑の申し子なんじゃないかと思う。

 実際、とてもありがたい話である。

 私はこの一年恋のレッスンを受けながら、朝井慎一郎の婚約者という副業を得た。そう割り切ると決めた。

 なによりうれしいのは、私もついに大人女子の仲間入りを果たしたという事実。

 大人の女になり一皮むけたというか、大げさかもしれないけれど、世界が変わって見えるような気がする。

 誰にとはなしにふふっと微笑んだ。

「桜子、なんかいつもと違う」

「そう? どんなふうに?」

「肌艶がいいっていうか、もしかして男?」

 もう。やっぱりわかるのね、美江ちゃんたら勘がいいんだから。

「実はね――」

 私は隠すつもりでいたけれど、慎一郎さんは隠さなくていいと言う。

 病院にも言うし、むしろそのために婚約したのだからと。

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