ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「シン(にい)の結婚相手が、まさか、夕月さんとはな」

 慎一郎さんを、シン兄と呼ぶ彼は氷室仁さん。

 ここは氷室さんが趣味でオープンさせたという『氷の月』というレストランバー。

 今日は子どもたちを朝井のご両親に見てもらってお泊まりデートの日。

 カウンター席の隣に座り、慎一郎さんが来るまでの間、氷室さんは私の相手をしてくれている。


 慎一郎さんと氷室仁さんは、青扇学園という資産家の子息と令嬢が通う一貫校の同窓生らしい。先輩後輩というよりも友人だと慎一郎さんは言っていた。

「慎一郎さんとは幼稚園から高校までご一緒だったと聞きました」

「そうそう。学年は俺がふたつ下なんだけど、生徒数はそれほど多くないから結局みんな顔見知りなんだよね。幼なじみのようなもんだから」

 私はごく一般的な家庭で育っているから、本来なら氷室さんとは縁がないのだけれど、彼はコルヌイエの上客なのでよく知っている。

 明るくてスマートで、なにしろイケメンだから、彼はコルヌイエでは人気者だ。

「俺が夕月さんを誘ってたなんて知ったらシン兄、ここにはひとりで来させなかっただろうなぁ」

 クスクスと笑い合う。

「まさかおふたりがお知り合いだとは思いませんでした」

「世の中狭いねー」
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