ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 聞けば総合商社に就職して、つい最近までロンドンにいたというのだから、エリートビジネスパーソンなんだろう。学生時代にはなかった自信のような活力に溢れている。

 山本先輩の隣にいる花嫁はニコニコと笑顔がかわいらしい、おとなしそうな女性である。おふたりとも幸せそうだ。

「この度はご結婚。おめでとうございます。私も精一杯お手伝いさせていただきますね」

「ありがとう」

 微笑み合う山本先輩とお相手の女性を前にして、私は気づかれないように視線を落とした。

「夕月さん、結婚は?」

「私は全然です。今は仕事が楽しくて」

「わかるよ、イキイキしてる」

「ありがとうございます」

 先輩は気づいていないだろうが、あの頃私は先輩に好意を持っていた。

 恋とまではいかないが、こういう男性ならばいい夫になるに違いないと思った。

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