ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 確かに。朝井様はここ最近いくつかの難しい手術をしなければならなかったようで、ホテルに戻ると、〝起こさないでください〟というドアプレートをかけて、それこそ泥のように眠っていたようだ。

 客室清掃のおばちゃんが働き過ぎじゃないかと心配していた。

 私との打ち合わせ中も、毎回のように電話で中座する。場合によってはそのまま急いで病院に行ってしまう。

 そんな状態なのだから、かりそめの婚約者を頼む余裕などないのもわかる。

『職場の女性に頼むのは避けたいし』というのも納得だ。

 モテモテの朝井先生だけに、迂闊には頼めないだろう。相手が本気になってしまっては後々困るだろうし。

 かといってレンタルの彼女のような専門業者のプロを頼むという選択は、知らない人を家に入れたくはないという朝井様の頭の中には最初からないのだ。

『とにかく両親をあきらめさせたいんだ。じゃないと父の暴走が止まらない』

 困ったことに朝井先生が結婚相手を探しているらしいと言う噂が、医者の間でささやかれ始めたという。
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